Vanilla
「あの、今日は私寄りたい所がごさいまして、一人で帰ってもらえますか?夕飯は作っておいたので温めるだけですので」

次の日の朝食中にキレられたらどうしようってビクビクしながら訊いた。


「どーぞ」

目も合わさず素っ気無い返事だが、許可をもらえた。


その日、仕事が終わると愛佳ちゃんに付き合ってもらった。
私達はショッピングモールにやって来た。
平日の夜ということもあり、人は休日の半分程だ。
快適にショッピング出来そう。


「火事で全部燃えちゃったのは大変だね〜」

昨日気付いた長袖を買うためだ。
というのはおまけで、


「それよりも話、聞いて!愛佳ちゃん!」

朝永さんの話を聞いてもらうためが本命の目的。
あとは朝永さんと一緒に過ごしたくないのもある。


「出て行った方が良いのかな、私……」

マネキンが着ているコートを眺めながら呟く私。

「置いてもらえてるなら可能性あるじゃなーい。あ、このコート可愛い」

愛佳ちゃんがそのマネキンの服を気に入ったようで手で触って物色している。
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