恋・愛至上命令。
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お店の中は入り口のトリッキーさと打って変わって、シックで落ち着いた雰囲気だった。
深い色の木目調で統一された床やテーブル。背の高い観葉植物と、壁に埋め込まれた色とりどりの可愛い熱帯魚が泳ぐ水槽に、南国のリゾート感も漂ってたりして。

「セリちゃん」

カウンター前のスツールに腰掛けてる、すらっとしたジャケット姿の男性が涼しそうな笑顔を振り向けた。

「こんばんは、アキラさん」

寄って行って、隣りにちょこんとわたしも。
時間が早いせいか他にお客はなく、例の美形のバーテンダーさんがにこりと微笑んだ。

「タイミング良かったかな。ダメ元で電話したから」

いつもサラサラで、長めの前髪が少しだけが左目にかかってる。その奥から覗く眸がどこかミステリアスで、・・・すごく魅惑的な人。

お互いに連絡先と下の名前しか知らない。こんな風にときどき逢って、一緒に時間を過ごす。一年前から。

「わたしも会えて嬉しいですよ?」

悪戯気味に返して。

「ご飯まだだろ? 何か食べに行こうか」

「はい」

そのまま席を立つと、アキラさんはさり気なくわたしの腰に腕を回す。そしてバーテンダーさんに軽く片手を上げて見せた。

「じゃあ千也(せんや)、後は宜しく」

「気を付けて。・・・セリちゃんまたネ」

彫りも深くて目鼻立ちがはっきりしてる、何ていうかイタリア系?なノリの美形さんにウインクされて。営業用スマイルだって分かってても心臓が跳ねた。

「千也。俺のセリにホストモードは厳禁だから」

冗談ぽく口角を上げたアキラさんは、そう言い置くと。わたしをエスコートしながらお店を後にした。
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