恋・愛至上命令。
2-3
夕方にお父さんと幸生が帰って来て、居間で顔を合わせた。
中肉中背で髪型はオールバック、ちょっと色黒で土建業の社長みたいなお父さんと。学校の成績は良くてインテリぽい、気障な雰囲気の幸生。二人ともスーツ姿だったから会合か何かだったのかも知れない。

「瀬里姉、相変わらずOLの真似ごと続けてんだろ?」

伊達でかけてる銀縁メガネのブリッジに手をやった幸生は、座椅子に胡坐をかいて煙草に火を点ける。白く濁った吐息を長く逃して、視線を傾げながら。

「そろそろ飽きて、どっか嫁に行く気ないの?」

「まだ23だし飽きてもないし。幸生に心配される筋合いないでしょ」

ちょっとだけムッとして。

「どうせ家事は大島にやらせて、料理のひとつも出来ないんだろうからさ。貰ってくれる男なんていやしないよ。弟としちゃ心配して当然」

しれっとした顔で言われて、ぐっと言葉に詰まった。
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