今日も今日とて、告りますのでご覚悟を。
4、私の知らない水瀬さん


「おー、お疲れ」

「お疲れ様です」


部長のおつかいで会議室まで向かう途中、営業部の大河原さんとすれ違った。

挨拶と会釈だけで終わると思いきや、飲み物の自動販売機が並ぶ休憩所兼喫煙所の方へ、こいこいと手招きされる。特に急ぎの用事ではなかった私はそれに従い、勧められるまま珈琲を奢って頂いた。


「高木さんって、うちの藤原と同期だったよね?」

「ですです、藤原がどうかしました?」

「いや、どうもしないよ」


ふふっと柔らかく笑う声。

飲んで飲んで、と缶珈琲のプルタブを開けてくれる。

女の子は爪が長いからこういうの大変でしょ、って。さすが営業マン、気が利くなぁ。藤原に爪の垢を飲ませてやりたいよ。

大河原さんは営業部のエースと呼ばれている人で、人柄はもちろん、爽やかかつ男らしい見た目で社内、社外共に人気がある。そんな彼が直属の上司になったと分かった途端、藤原は「俺にもおこぼれががありそうだ」と、アホなことを言っていたけど……。

まさか、迷惑かけてんじゃないでしょうね。


「あの、藤原は最近どうですか?」

「ん? 頑張ってるよ。優しいね、同期の心配?」

「いえ、そういうわけじゃないですけど」

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