王子様とブーランジェール
baKed.1 王子様と挙動不審ダメドジ女
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王子様と挙動不審ダメドジ女
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「あぁーっ!汗が出るー!」



ホームルーム5分前。

教室内にぞくぞくとクラスメイトが増えていくこの時間。

朝練も終え、早々と教室に落ち着いていた俺達。

その中の一人、友人の咲哉が一言雄叫びをあげた。

一緒にいた俺達、一瞬ビクつく。



「うわっ!びっくりさせんな!急に叫びだしやがって!」

ちょうど牛乳を飲んでいた陣太。牛乳吹き出す危機だった。

「サッカー部はおつかれさんだな。朝からハードに練習しちまってるもんな」

「男バスは朝練無くていいですよなー?理人さんよ?」

「汗出るなら拭け」


涼しい顔をしている男バス部員・理人に冷たくあしらわれたサッカー部員・咲哉。

「はいはい。わかりましたよ。…夏輝、さっきのやつくれ。何とかシート」

「デオドラントシートだろ」

そう言ってカバンの中から、大容量版のデオドラントシートを取り出し、箱ごと咲哉に渡してやる。

「はいはいサンキュー。男子高生、臭い対策大事!」

勢いよく一枚取り出し、勢いよく首の周りを拭き始めた。

「おまえ、脇は人前では拭くなよ」

「汗臭い教室冗談じゃねえぞチャラ男」

「はいはい爽やかな匂いを漂わせて帰ってきますよったら」

咲哉は俺のデオドラントシートの箱を持ってちょっと離れた。

もうホームルーム始まるから多目に見るけど、本当は教室で拭かないでほしい。

トイレ行くなり、人目につかないところで頼みたい。


「しかし、箱で持ち歩くなんて潔癖ちっくだな。夏輝は」

「バカヤロー。潔癖とかそんなんじゃねえよ。マナーだろマナー」

「匂い対策、それがモテモテ夏輝くんの秘策。俺もシート箱持ちすっかなー?おまえみたいに爽やかになって、モテモテになってみたい」

「はぁ?」

どさくさ紛れに何を言ってるんだ。

でもホント、陣太の言うとおり、汗臭い教室、冗談じゃねえわ。

香ばしいパンの香りならともかく。




(………)



そういや。

アイツ、まだ来てねえ。



教室内を今一度見渡す。

姿は、やはりない。




(ったく…)




今日もあんな早い時間に起きてると思ったら。

見事に予想通りじゃねえか。



始業のチャイムが鳴り、担任が「出席取るから座れー!」と姿を現すと、それは決定的になる。



おいおい。

入学してから、何回目だ?

遅刻…。




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