絵本王子と年上の私
8話「明日への期待と緊張と」



   8話「明日への期待と緊張と」


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 大学祭前日の夜、しずくは白に貰ったパンフレットを眺めて過ごしていた。
 電話で呼び出された次の日に後輩に貰ったと、嬉しそうに持ってきてくれたのだ。しずくが通っていた大学は小さな女子大だったため、有名大学の大規模な大学祭というのに、実は憧れていた。保育科は実習も多いため大学にいない事も多く、部活やサークルに入ることはほとんどなかった。そのため、しずくは大学生活で大学祭に行ったことがない。
 学生の頃からの夢がやっと叶うのだ。

 白と二人で、いきたいところにペンで印をつけたり、食べたいものもチェックしていた。予想以上に行きたい場所が多かったので全てに行けるかわからないが、しずくは印がついてある場所を読んで、明日楽しく過ごす妄想に浸っていた。

 そんなときにスマホが振動し、メッセージが着たことを通知した。それをすぐに確認すると、美冬だった。
 先ほど、「白くんとは大丈夫なの?」というメッセージがきており、しずくは「お互いに忙しくて、まだ何も聞いてないよ。」と伝えた。
 その返事が今の通知だ。

 「もう直球で、家に行きたいって言っちゃえ!」
 怒っている猫の可愛らしいスタンプと共に送られてきたのはそんなメッセージだった。

 口では「そんなの言えない。」と言いがちになる。けれど、果たしてそれでいいのだろうか?とも、悶々と悩んでいるうちに考えが変わってきたのだ。
 年下でも頼りがある彼に、しずくは甘えすぎじゃないのか?と、自問していた。
 とってもとっても恥ずかしいが、しずくの方から「白のお家にいってもいいかな?」と言ってしまおうか。そう思っては、自分が白に言っている姿を想像して枕に顔を埋めながら悶絶してしまう。

 甘えているだけではなく、年上として自分からリードしたい。でも、お家に行きたいというのも、甘えのような気もするのだ。職場を兼ねてるとなれば人を招きたくないのかもしれない。それを無理矢理お願いするのも申し訳ない気がしていた。

 それになにより、男の人の家に行くということは、その後の事を想像してしまう。付き合い始めたばかりということもあってか、白はしずくが家に招いても、何もしてこない。キスを迫られる事は何度もあったが、それ以上はしてこないのだ。
 でも、男の人の家に行くという意味は、その先を意味しているように感じてしまう。それは、恋愛経験がほとんどないしずくにもわかっている事だった。

 それを知った上で、女から誘うのはどうなのかとも思う。恋愛経験が少ないしずくにはハードルが高かった。
   




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