御曹司様の求愛から逃れられません!
6.御曹司様と助手
*******

あのあと一度、絢人さんからはすぐに電話が来た。本部長室で説明されたことと同じ話を再度聞かされたため、私は彼の好きだという気持ちをもう疑っていないこと、その上であとは私の問題だからそっとしておいてほしいことを伝えた。

絢人さんは“押してダメなら引く”ということを知らないから、こちらからそこまで言わないとダメなのだ。

……って、私ごときが本当におこがましいとは思ってるんだけど。

その後は絢人さんはときどき「仕事はどう?」という生存確認のメッセージをくれるが、もう私に追い討ちをかけるようなことは言わなくなった。
流され続けたくせに今になって曖昧な態度をとる私に、怒っているだろうか。

私も、このままの状態じゃダメだって分かってるんだけど……。


それからもう、二週間が経った土曜日。
私は自宅に引きこもり、コメディ映画を観終わったところだった。

【お疲れ様、真夏。聞きたいことあるんだけど電話してもいい?】

“ピコン”という音とともに新たなメッセージが来た。画面を覗き込んだが、今回は絢人さんではない。

送り主は『小島早織(こじまさおり)』と表示されている。絢人さんの同級生で、私からしたら同じく大学の先輩にあたる人だ。
< 83 / 142 >

この作品をシェア

pagetop