「悪い」
「いえ、私も余計な話をしたし」
「ふ。そんな数分の差でできないでしょ。足りない足りない」

 不機嫌というよりは悲し気な溜息をこぼしつつ、クローゼットからシャツを取り出し切ると眼鏡をかける。

 伏し目がちな目が眼鏡の奥に見えると、小春が言っていた『ストイックで冷たい印象』の喬一さんがちらっと見えたような気がした。

「いつ帰ってくるかわからないから、ご飯は先に食べて、よく眠って良い子にしてて」
「えっと待ってたら、駄目ですか?」
 玄関に向かう彼の後を、犬のようについて回る。
「それは嬉しいが、帰ってきた俺は狼かもしれないよ」
 ガオっと笑って見せた彼は、そのまま頭を撫でてくれた。


「なので寝れるのは俺がいない時かもしれないから、寝ときな」
「……」

 彼は甘い食べ物を作るのは苦手と言っていたけど、自分が砂糖みたいに甘い王子さまだから、共食いみたいになるから作れないのかもしれない。


 そのおかげで私も甘いお菓子なんてもう食べられないほど、体中甘く満たされていた。

 彼の甘い言葉は、デザート。なのに中毒になってしまった私は、デザートでは待てないと強請ってしまいそう。

 消えてしまった彼の姿を見ながら、私はやる気を出すために頬を叩いて、急いでシャワーするために着替えに向かった。