カバンが床に落ちる音で、私の意識は目覚めた。けれど体は動かない。

「あー、もう。寝てていいって連絡しただろ」

 重たい瞼が持ち上がらなくて、テーブルに突っ伏していた私は帰宅して疲れている旦那さまに抱きかかえられてしまっている。

 それに気づいたのは、階段を抱きかかえられて上がっている振動だった。
「喬一さんっ」
「寝ててっていったろ。急遽夜勤になったって連絡したのに」
「……今日は休みだし、一緒にベットで寝ようと思ってわざと起きてたんです」

 勇気を出して私もご飯を作ってみたいと言ってから数日。
 土曜の夜に呼び出されそのまま夜勤になった彼を待っているのは実はちょっと楽しかった。
 家の目と鼻の先にある職場は明かりがついていて、喬一さんが起きて仕事をしていると思ったら、なんだか眠れなくなって、ついついゲームしたりテレビを見たりして時間が経ってしまったし。

「それに、あまり仕事ばかりだと嫁が浮気するかもですよ」
「ほお。俺よりいい男?」