癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
次の日、遙季は父親に頼んで車で学校に送ってもらった。

光琉と登校して注目を浴びたくない。

昨夜、遙季は部屋の電気を消すことができず、一睡もできなかった。

教室に着くと、親友の笹原梨々香が駆け寄ってきた。

「遙季、聞いたよ。大丈夫?」

遙季はなにも言わずに微笑んで頷いた。

幸いに冬服なので傷は隠れていた。

「ハル、昨日は痛くて眠れなかったんじゃないか?」

「悠生は大丈夫?」

遙季が尋ねると、悠生は肩をぐるぐると回して

「この通り」

と、ニヤリと笑ったが、痛いのか顔はひきつっていたので遙季も梨々香も笑った。

眠い目を擦りながら、なんとか昼休みまで授業に参加した。

「遙季、購買部に行こう」

昨日は遅くまで警察署にいたため、さすがに遙季の母親の祐子も寝坊をして弁当を作れなかった。

遙季は気分が優れなかったが、梨々香の誘いを断れず、購買部についていった。

「遙季」

購買部の途中の廊下で光琉の声が聞こえた。

遙季はビクッと肩をすくめると、恐る恐る後ろを振り返った。

恐らく、遙季が光琉に黙って学校に先に行ってしまったことが気に入らないのだろう。

しかし、遙季は、怒っているような表情の光琉の向こう側に、あの中村若菜が立っているのを見つけてしまった。

昨日の放課後、美術室で若菜に話しかけられてから、警察に保護されるまでの一連の流れがフラッシュバックする、、、。

遙季は頭を抱えてしゃがみこむと、何度も何度も首を振った。

駆け寄る光琉の足音に

「来ないで!」

と叫ぶ。

その場で身を固める光琉を目線で制して、梨々香は遙季を支えた。

「遙季、保健室に行こう」

ガタガタと震える遙季のところに、その様子を見ていた同級生の一人が車イスを事務室から運んできてくれた。

その後、気を失った遙季を、迎えに来た母・裕子が連れていった先が、鈴村医療センターの思春期外来だった。

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