癒しの魔法使い~策士なインテリ眼鏡とツンデレ娘の攻防戦~
40階にあるクラブスイートという部屋は、2方向が海に面しており、水面に映る月がとても幻想的だった。

各窓辺にソファとテーブルが設置され、いろいろな角度から景色が楽しめる。

「素敵,,,」

いったいこの部屋はいくらするんだろう?薄給の遙季はルームチャージが気になって、不安気に光琉を見つめたが、

「医者になって4年間、俺はがむしゃらに仕事しかしてこなかったんだ。この日を楽しみに生きてきた俺の貯金額を聞いたら驚くぞ」

光琉が遙季に耳打ちをする。

「マジなの?光琉?!」

その額に唖然とする遙季に、

「いつでも結婚できるだろ?」

と、光琉は笑った。

給料の少ない研修医時代も、休みの日にはアルバイトに出掛け、空虚な時間を作らないようにした。

後期研修の2年間は、救急外来で夜間、休日も働いて時間外手当てはかなりの額になった。

遙季が学生の頃は、たまにK市に出かけることで旅行もしたが、他に好きな車に多少つぎ込む以外は、実家通いだし、お金を使うことはなかった。

気がつけば、光琉の貯金は結構貯まっていたのだ。

「だから、こんなの贅沢のうちに入らない」

海を見つめる遙季をそっとソファに座らせ、光琉もその隣に座った。

「遙季。俺の遙季,,,」

光琉はソファに遙季を押し倒すと、その唇を味わうように口づけていった。


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