【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あっ……」

倒れそうになったわたしの体を支えたのは、他でもない神永さんだ。

彼はわたしの耳元に唇を寄せてきた。

「そんなになるほど、気持ちよかったですか?」

「!!」

なんてことっ!

わたしは彼をきつく睨んだが、なぜだか彼は満面の笑みを浮かべている。

「そんな怖い顔しないで下さい。せっかくのかわいいお顔が台無しですよ」

「ど、どうしてキス!……フリのはずですよね?」

小声で言い合うわたしたちを置いて、式はどんどん進行していく。

「言ったじゃないですか。少しお仕置きが必要だって」

たしかに言った。まさかキスだとは思わなかったけれど。

わたしは彼から体を離しまっすぐ前を向いた。これ以上失敗したら、何されるかわからない。

言い返すことができずに、唇を尖らせる。すると隣で彼が口元を押さえて笑いをこらえているのに気がついた。

笑うなら、どうぞ笑ってください!

開き直ったわたしは、ますます唇を尖らせた。

「そんな可愛く唇をとがらせておねだりされたら、またキスしたくなってきました」

「なっ!」

思わず声を上げたわたしに、会場の視線が突き刺さる。シュンとして背中を丸めたわたしを見て、神永さんは笑いをこらえるのに必死だった。

恥ずかしさで小さくなることしかできないわたしは、心に誓った。

――もうっ! こうなったら、絶対絶対、契約してもらうんだからねっ!
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