【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
あれ……どうしたんだろう。もしかして、具合が悪いのかな?

 助手席側の窓から覗いてみたけれど、神永さんは目をつむっていてまったく気がつかない。

 わたしが窓をコンコンとノックをすると、神永さんはやっと気がついてこちらを見た。

 しかしその表情は気だるげで、体調が思わしくないのは一目瞭然だった。わたしはあわてて運転席の方へと駆け寄る。

「あれ、俺、今日約束していた?」

「いえ、今日は坂上さんに会いに来たんです。それよりも神永さん体調が悪いんじゃないですか?」

 無理に笑おうとしているけれど、見るからに覇気がない。

「そうかな? 尾関さんの気のせいじゃないの?」

「どうしてごまかそうとするんですか? ちょっと失礼しますね」

 わたしは神永さんの額に手を充てる。

「な、ちょっとすごい熱ですよ、どうしてこんな」
 
 思わず大きな声を上げたわたしの手をとって、神永さんが首を左右に振った。

「大きな声出さないで、本当に大丈夫だから」

 そうはいっても、どう見てもいつもの彼とは違う。額を触った感じでは相当熱も高く、呼吸も荒い。

「もしかして、自分で運転して帰るつもりなんですか?」

 エンジンはかかっていないけれど、そのつもりなのだろう。

「あぁ、すぐ近くだから。本当に――」

「どいてください」

「え?」

 わたしの言葉に、神永さんは目を見開いて戸惑っている。

 しかしわたしはそんな彼に構うことなく運転席のドアを開けた。
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