仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第七章 関係
一希との話し合いは、お互いの溝を更に深くした結果になった。

その翌日から一希の帰宅は更に減り、顔すら見なくなっていた。

クリスマスも美琴は静まり返った部屋でひとりで過ごした。

(一希は今頃観原千夜子と楽しく過ごしているのかしら)

今となっては彼に何の期待もしていない。

それでも募る孤独感は無くせなくて、大晦日の昼過ぎに、実家に電話をした。

弟達の声が聞けたら、寂しさも癒えるかと思ったからだ。
義母の恵美子とも久しぶりに近況を報告しあいたかった。

けれど、電話に出た恵美子はとても忙しくバタバタしており、殆ど会話もままならなかった。

『美琴ちゃん、ごめんね。陸達の友達が来ていて騒がしくて目が離せないの』

『あっ、ごめん、忙しいところに。大した用じゃないから新年の挨拶に行った時にでも話すね』

『あっ、私もその時話があるの。ヘルパーさんの件で相談がしたくて』

恵美子は早口で言う。

『ヘルパーさん?』

『そう、もう少しお願いしたくて……ああっ! 陸、ラーメン零してるじゃない!……美琴ちゃん、ごめんね。切るわ』

『あ、うん。わかった』

美琴が言い終わるよりも早く、通話は途切れた。

(賑やかそうだったな……)

家族と話して穏やかな気持ちになろうとしたのに、逆に孤独感が深まった。
< 110 / 341 >

この作品をシェア

pagetop