仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第十五章 真実
一希と別居して一か月が過ぎた。

久我山家での生活は予想していたより順調だった。

祖父は出戻った美琴に対して寛容で、一希とのことを聞いてきたリはせずに適度な距離を置いてくれいている。

生活費は一希が祖父に渡しているようで、離婚が正式に確定するまでは仕事をしないように言われていた。

継母の恵美子からの無心もなく、神楽家の義父と義母から連絡が来ることもなかった。

祖父と義父で話し合いがされたようだが、美琴が出る必要はないと言われていた。

結婚のときも自分の意思は無かったが、離婚でも蚊帳の外だ。

ただ流されているだけのようで、このままでいいのかと、ときどき酷く不安になる。

一希との別居前の穏やかな暮らしを度々思い出した。
けれど夢に見るのは、冷ややかな目で美琴を責める一希の姿。それから観原千夜子の勝ち誇った微笑み。

(今頃一希はどうしているんだろう)

気になったが自分から連絡する勇気が出なかった。一希からも何の連絡もない。

(離れている間に、以前の一希に戻ってしまったかもしれない)

気になりながらも動けないでいたある日、祖父から思いがけない知らせを受けた。
< 295 / 341 >

この作品をシェア

pagetop