残念な王子とお節介な姫
大阪へ
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大阪へ

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俺は30歳になった。

入社して、間もなく丸8年になろうという3月初旬、俺は課長に会議室へと呼び出された。

「課長、何ですか?」

俺は入室して早々に尋ねた。

「宮本くん、まあ、座りなさい。」

と課長は自分の隣の椅子を引いて、俺に座るよう促した。

「はい。」

俺がそこに腰を下ろすと、課長が言った。

「内示が出てるんだ。」

「異動って事ですか?」

「異動だが、ただの異動じゃない。
異例の栄転だ。」

「異例の?」

どういう事だ?

「大阪支店システム部課長として、異動して
もらいたい。」

「はぁ。
係長ですよね?」

主任の俺が課長になる訳がない。

安達課長、内示で役職名を言い間違えるなんて、絶対やっちゃダメなヤツだろ。

「いやいや、課長だよ。」

「は!?
俺、主任ですよ?
まだ、入社して8年ですよ?」

あり得ないだろ。

「そんな事は、分かってるよ。
実は、今、大阪支店は、大変な事に
なっててね…」

安達課長の説明によると、現課長のパワハラが原因で、今月末で約半数のSEが辞めるらしい。

今、課長を異動させる方向で説得してはいるが、なかなか上手くいってないようだ。

そこで、栄転を餌に現場にも入れるSEを管理職に据えるという荒業を思い付いたらしい。

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