残念な王子とお節介な姫
新生活へ
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新生活へ

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翌 6月29日(土)

俺は結の引っ越しの荷造りを手伝っている。

俺の部屋の段ボールも片付けられないのに。

明日、引っ越し業者が来るから、それまでに片付けなければいけない。

結は、退職後、ゆっくり荷造りをしたいと言ったが、俺は1日でも早く結を大阪へ連れて行きたかったから、勝手に業者を手配した。

ドレッサーの引き出しを開けると、その場に不釣り合いな半券が出てきた。

「結、動物園、行ったの?
結、好きだっけ?」

俺が見つけたのは、2枚の動物園の入場券。
違う動物園だ。

日付が入っている。

今年の4月。

俺が大阪へ行ってすぐだ。

「あ、水族館もある。
結が好きなら、大阪にもあるから、水族館
行く?」

出来るだけ、平静を装って聞いてみる。

動物園も水族館もデートコースだろ。

結はそっとその入場券を俺の手から取り上げた。

「海翔がいなくて暇だったから、同期の子と
行っただけ。
別にそんなに好きなわけじゃないよ。」

結はその入場券をゴミ箱に入れた。

捨てる半券をなんでそんな丁寧に優しくゴミ箱に入れるんだ?

おかしいだろ。
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