愛のない部屋
ラフな関係
朝からエレベーターの中で爽やかな笑顔に遭遇。
ああ、眩しい。
「宮瀬さん、おはよう」
「おはようございます」
寝癖ひとつない髪に、魅力的な笑顔。
性格は一癖も二癖もあるけどね。
「今日も元気?」
「はい」
見た目は完璧なのに好きになれないのは中身のせい。朝からテンションが高いところも嫌い。
「アノ噂も、だんだん消えて来たね」
ほら、そういうとこ。
私の耳に薄い唇を近付けた直属の上司の篠崎は、峰岸とは同期らしい。
「くだらない噂なんて気にする価値もありません」
篠崎になら私の毒舌は通用するので、はっきりと言う。でもきちんと遠慮はしてるよ、これでも…。
「峰岸と宮瀬さんはお似合いだと思うよ」
前言撤回。
私は篠崎に遠慮し過ぎているようだ。
もし上司でなければ、殴る。
「実際、どうなのよ?」
本気で殴りたい衝動に駆られても踏み留まっていられるのは、私が常識のある社会人という証拠だ。
「どうもありません」
「本当に?一緒に暮らしていれば、間違いも起こるものだよ」
「……」
「君の着替え中に、峰岸が乱入したりして」
「……」
篠崎の中では、峰岸はただの変態と呼ばれているのだろうか。
そうでなくてーー
同居のことを篠崎が知っていることに、内心ひどく驚いたし、焦っていた。