――一度だけ。

父と春熙の言いつけを破ったことがある。
それは私を、さらに籠の中へと閉じ込める結果になったのだけど。

通学はいつも、運転手付きの車で送り迎え。
幼稚園のときからずっとそうだった。

窓の外で手を繋いで歩く親子が酷く羨ましかった。
子供たちが遊んでいる公園で私も遊んでみたかった。
友達と連れだってアイスクリームを食べてみたかった。

でもそれらすべて、私には許されないことだと、諦めていた。

あの日、なにがきっかけだったのかなんて思いだせない。

いつものように、帰ってこない父に反発したかっただけかもしれないし、いつまでも私を子供扱いする春熙に反抗したかっただけかもしれない。

でもきっと、ただの冒険心だったというが真実な気がする。

高校生の私はその日、迎えの車を待たずに学校を出た。
目的地は駅前に来ている、移動販売のクレープ屋。
友達と連れだって、は実現できないが、憧れた学校帰りの買い食い。
うきうきと駅へと向かったのを覚えている。