でもはっきりと口にする。

だって今日はそのために、ここに来たのだから。


彼との出会いは最悪だった。

簡単な仕事もできない私を、彼は怒鳴ったのだ。

でもそのすぐ後、私の立場を知って限られた範囲ではあったけれど、父と婚約者の鎖から自由にしてくれた。

諦めない自由を与えてくれたのも彼だ。

そんな彼を私は――。

「だって私は……あなたが好き、だから」

彼をまっすぐに見つめ返す。

もうすでに婚約者との入籍が決まっている。
きっとこの決断は許されるものではないだろう。

けれどもう、私は自分に――嘘をつきたくない。

「愛乃(よしの)……」

彼の顔が近づいてきて唇が重なる。