Take me out~私を籠から出すのは強引部長?~
「どうもこうも。
転居届を出しに来ただけなのに、彼女が用紙をくれないから」

杉原課長が私に下がっているようにと目配せし、小さくあたまを下げて私は自分の席に戻った。

「転居届ですね。
すぐにご用意します」

事務所の中で杉原課長が開けた棚は、私が見ていた棚とはまるで正反対の方向だった。

「こちらにお願いします」

「ああ」

用紙を受け取り、男は無言でそれを埋めていく。

「高鷹(こうたか)部長、お引っ越しされたんですか」

自分よりもずいぶん若い男に、杉原課長は敬語だった。
まあ、役職があちらの方が上だからだろうけど。

「マンションを買ったんだ。
それで。
……これでいいか」
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