ロシアでのレオとの生活は何もかもが大変だったけど、後悔はしていない。

 レオの家の人たちは見知らぬ土地から来た私に親切にしてくれた。裏の家業があるとは思えないほど、温かなファミリーだった。

 毎日怒ったり、泣いたり、笑ったりして、それが幸せだと思える日々だ。

 そして今までの人生で一番嬉しかったことが待っていた。

 彼と暮らし始めてから一年が過ぎる頃、私とレオとの間に双子が生まれた。

 難産で、特に下の妹の方は何時間も遅れて出てきたけれど、何とか無事に育っている。

 保育器から二人が出てきた日、レオは病院にやって来た。

「あ……」

 レオは双子の兄の方を抱き上げて、ぽろっと涙を零した。

「どうしよう……止まらないや」

 大粒の涙を零しながら、レオは赤ん坊に頬を寄せて笑う。

「かわいい。なんてかわいいんだろ。ハルカ、ありがとう」

 何度もありがとうと繰り返して、レオは双子を交互に抱き上げる。

「わかったよ。僕、この子たちを愛してる。こういうことだったんだ」

 双子にキスをしながらレオは言う。

「大事にしようね、ハルカ」

「ええ」

 私は彼に微笑み返して、ふと呟く。

「……レオ、悪いことってどんなことかしら」

 私が宙に向かって放った言葉に、彼はそっと目を上げる。

「法に反すること? 倫理に反すること? そのどちらかだったら、私たちは何も悪いことはしてないわよね」

 彼がぽろぽろと流す真珠のような涙を手で拭いながら、私は告げる。

「でも私たちがしたことは確実に悪いことよね」

 私がレオと心を通じて子どもを作ったことは、きっと兄に知れたら許されない裏切りだ。

 私の手をレオが掴む。その優しさに、私は微笑む。

「だから私が今こんなに幸せなのは、きっと私が酷い人間だからでしょうね」

 そうして、私は二つの小さな温もりに触れた。


***


 眠っていても手を取り合う二人の子どもたちへ。

 なるべくなら、生まれた時に持っている天使と同じ純粋な心を、ずっと持ち続けてほしい。

 でもいつかはあなたたちも人間になる。汚れたことも、醜いことも知る。

 けれどそうなったとしても、兄妹の絆を守り続けてほしい。

 その絆は、あなたたちを内側から支えてくれるものになるの。

 私がレオやあなたたちを愛することができたのは、兄が私をめいっぱい愛してくれたからなのだから。

 私は今兄に手紙を書いているの。あなたたちのこともたくさん書くつもりよ。

 いつ送ることができるかはわからないけど、届けたい思いがあるから。





 ねえ、あなたたちはどんな未来を送ることになるのかしら。

 だけど心配要らないわ。あなたたちは生まれた時からつながっている存在がいる。

 たとえいつの日か離れる時が来たとしても、お互いを愛してると言えるようになって。

 そうしたらあなたたちはきっと、どんなことにも立ち向かっていけると信じてる。

 愛してるわ。美晴、安樹。