いつも同じって、私はいいことだと思うんだ。

 アレクのひと声で起こされて、着なれた服を着て、ごはんとみそ汁とウインナーを朝ごはんに食べて、時間になったらミハルと学校に行く。

 昨日との違いなんてほとんどない。でも、変わらない昨日から今日を通って、その後にいつもの明日が来る。それって何にも代えがたい貴重な出来事じゃないだろうか。

「……」

 ただ、そのことに気付くのは、ほとんどが「いつも同じ」でない今日が来てしまった後のことなのだ。

 その日、私は真っ暗闇で目を覚ました。

 この時点で異変に気づくべきだった。私は一度寝るとその日の内にはまず起きない。そして私の目ざましであるアレクのひと声は、決まって翌日の朝七時、太陽の光がカーテンの向こうから差し込む頃に響く。

 ぼんやりと目を開いて天井を見る。目が慣れるまでもなく、ここは私の部屋じゃないとすぐに気づいた。

 そこはずいぶんと広いホテルの部屋のようだった。心地よい程度に暖房がかかっていて、シーツの外に出ている肩も全然寒さを感じなかった。

 ふと頭に疑問符を浮かべる。

――ちゃんとお腹をしまって、肩までお布団を被って寝るんですよ。

 私は物心ついた頃からアレクに言われているので、絶対に顔以外を外に出して寝たりしない。その私がどうして肩を外気にさらしているのか。

 つい、と自分の体を見下ろして、そこで息をのむ。

 ……パジャマどころか下着もつけない全裸で寝ていることに気付いて、私は今度こそ完璧に目を覚ました。

「なっ」

 明らかにおかしいぞと頭に警鐘が響く中で、もぞりと隣が動いた。

 私は一瞬期待した。そこに寝ているのが私の片割れであるミハルなら、私はかなり無理があるながらもこれが日常だと信じられた。

 二人で旅行中に、ふざけてミハルと裸で寝込んでいた。そういうことにすればいい。

 いやミハルと寝転んでいても服くらいは着ているような気もするが……細かいことはこの際どっちでもいい。

 まあ父であってもあの人は妖精だから平気。アレクもお母さんだから大丈夫だ。それ以前に女友達なら何の問題もない。

 ところが隣で体を起こした男は、私の期待のどれとも違っていた。

「……安樹?」

 肩幅の広いがっしりとした体格に、短い黒髪で、寝起きだからか声がいつもより低く掠れている。

 彼はその黒々とした目で私を見て、ついで自分を見下ろす。

 彼もまた裸であることを私も気づいて、その瞬間私の頭が許容量をオーバーした。

 ガン、と私は自分のできる限りの力で壁に頭を打ち付けた。

「おい、何してる。やめろっ」

 彼は慌てて私を後ろから羽交い絞めにしてそれを止めた。

「止めるなっ。こんな悪夢なんてないっ」

 私は涙目になりながら、彼をぎっと睨み返す。

「なんでお前とこんなことになってるんだ、竜之介っ」

 その日の私は、天敵の幼馴染と全裸でベッドに入っているという、最悪の場面から始まったのだった。