君と二人の201号室
深夜11時のコンビニ



――ピロリロリン♪



あ、あのお客さん、また来た。

いつもコーヒーとチョコレートを買っていく男の人。



「いらっしゃいませー」



その人は、顔がかなり整ってる。

しかも、スラッと背が高くて、髪もサラツヤ、おまけに肌も綺麗。

さらには若いから、さぞかしモテるんだろうなぁ。


黒髪、赤いピアス。12月上旬に相応しい、黒いトレンチコート。おしゃれだ。


ただいまの時刻、23時。

毎日毎日、その人は決まってこの時間に来ていつも同じものを買うものだから、さすがに覚えてしまった。


今日も店内を一通り回ったあと、コーヒーとチョコレートを手に持っている。


そのままレジに来るのかな~。と思いきや、今日は珍しくおにぎりコーナーに行って、おにぎりを三つ持って来た。

鮭と昆布とツナマヨ。王道の三つだ。あぁ、美味しそう。

夜ごはんは食べたのに、見てるとお腹が空く。


この人、今から晩ごはん食べるのかな…。お疲れ様です。

今から晩ごはん…って、作ってくれる彼女さんとかいないのかな。いそうに見えるけど。

まぁ、そんな人いたら、毎日一人で夜遅くにコンビニなんて来ないだろうな。


…何してる人なんだろう。

こんな夜遅くに、毎日わざわざ。仕事帰りとか?


…失礼ながら、社会人にはとても見えないけど。

高校生の私と同じくらいに見える。

ものすごく童顔なのかな。…とか言ったら童顔の人に怒られるか。すみません。



「…お願いします」

「かしこまりました。お預かりしますね」



その男の人から発せられる心地良い低音ボイスが、私の耳に届く。


この時間に来るお客さんなんてそうそういないし、この時間の店内は、バイトの私ひとり。時々バックヤードに店長がいるけど。

なんだか、この声を独り占めしているような気分だ。




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