4時44分45秒目の世界には
……
少女はその夜、ふと、目を覚ました。

尿意を覚えたわけでもなければ、喉が乾いたわけでもない。

なにかの気配を感じたわけでもなければ、なにかに起こされたわけでもない。

ただただ静寂とした、墨の漂うような闇の中で、目を覚ました。

体が、なにかで吊り上げられるように軽く、持ち上がる。

寝起きの不快さや不明瞭もなければ、手足の動きに鈍さもない。

瞬発的な、まさに覚醒だった。

洋服ダンスの上に飾ったクマのぬいぐるみ。

ペンギンの貯金箱。

机の上に置いたランドセル。

ドアの横に立つ観葉植物。

上半身だけを起こして見回した室内は、暗然。

オレンジ色のナツメ蛍光灯が、淡く弱々しい陰影を浮かせていた。

「……お水……」

呟いて、少女はベッドからゆっくり抜け出した。

ひたり、と、床についた足からは、水溜まりに踏み込んだような冷たさが伝わる。
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