麻布十番の妖遊戯



「この時をどんなに待ったか」

 瑞香は一人納得するように頷きながら言葉を土に向けて垂らした。
 その着地点には己の頭が埋まっている。
 操り人形を動かすようにのんびりと顔を上げたその両目の内にはしっかりと司を捉えている。

「私がどれだけの恐怖を感じたか。苦しかったか。あなたはちっともわかっていない。それは死んでからも変わらない。小屋にいた子はどうしたのか、今あなたの口から聞けてよくわかった。同じように殺して埋めたのね」

 瑞香の顔にはなんの感情も浮かんでいない。
 ただ、血の気はなく青白くなっているだけだった。

「そうだよ。殺してバラバラにして埋めた。人間を養分にして育てた野菜ってもんを見たかったんだよ。俺の家族にも食わせたから、お前もあの女もその前のもみんなの体の中で生きられている。よかったな」

 司の顔には気持ちの悪い笑みが張り付いている。よもや人のものではない。化け物のような、そんな雰囲気だった。

「掘り返してみたらいい。そこに君がいる。腐り果てたゴミのようになって転がっている。虚しいもんだな」

「おっとこれはダメだな」

 今の一言は聞き捨てならないとばかりに侍が瑞香の横に、闇を切って現れる月のように姿を表した。

「そうよね、今のはさすがにダメだわ」

 昭子の顔に笑みが溢れている。

「俺はもう少し観ていたかったけどな」

 太郎も闇が捌けるように突如としてその姿をのぞかせた。

 無のところから突然湧いて出た三人が誰なんだか考えるが、司にはこのさんにんに覚えがない。記憶にない。しかし不思議と恐怖は感じない。首を傾げ、瑞香を探ってみる。
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