お見合い相手はエリート同期
8.コレはダレの?

 仕事のキリをつけて休憩室でコーヒーを飲む。
 どうしても気持ちが乗らない。

 残業をするだけ無駄な気がしてしまう。
 今日はこのまま帰ろうかな。

 1人ため息を吐く休憩室で誰かが近づいてくる足音を聞いて顔を上げる。
 そこには岡本課長がいた。

「お疲れ。」

「あ、お疲れ様です。」

 精一杯の挨拶を返してもさすがに力無い声ではすぐにバレてしまった。

「言葉通り疲れてる?」

 微笑まれて曖昧に微笑みを返した。

 いつもは心ときめく岡本課長の優しい視線も今はパワーに変えることが出来ない。

 ランチから職場へ戻る帰り際に言われた知世の言葉が頭をグルグル巡る。

「澤口くんが嫌ならさ。
 澤口くんに拘らなくていいんじゃない?」

「そういうわけには……。」

「お見合いに拘らなくても出会いってどこに落ちてるか分からないよ?」

 知世は軽い気持ちで言った言葉がいつだって私の胸に突き刺さる。

 深い意味なんてないのに考えさせられて、後日「あの言葉で悩んだ」って打ち明けると「私、そんなこと言ったっけ?」ってくらい知世には何気ない一言で。

 知世は何も不誠実であれ!と言いたいわけじゃないと思う。たぶん。
 自分の心に正直になってこそ幸せになれるんだって言いたいんじゃないかな。

 深読みし過ぎかな。
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