mirage of story
始まりの日
〜1〜






小鳥がさえずる穏やか過ぎる朝。
窓の外で小鳥が舞うように飛ぶ。その黒い影がちらほらとカーテン越しに映される。

カーテンの隙間から洩れる光が、外が晴れだということを報せる。





そんな中で、一人の少女は冷たい頬に感覚を覚えて目を覚ました。



瞳を開けば、窓から洩れる光が彼女の瞳を煌めかせる。
彼女の澄み切った水色の瞳はその光を湛え、それから目の前に広がる光景を映し出す。



そこにあるのは、質素な家具と光の洩れるカーテン越しの窓。
そして四方を囲むのは、温かな雰囲気を醸す気の壁。
いつもと変わらない自分の部屋の中に、少女つまりシエラは居た。





いつもと同じ。
でも、ただひとつだけいつもと違うことがシエラの目の前で起こっていることに彼女は気が付く。








(何だか、目の前がぼやける)




見慣れているはずのこの風景。
なのに、何故か今日は妙に歪んで見える。



視力が著しく低下したのか、それともまさか老眼か。

いや、老眼ということはないだろう。多分。
いきなり老眼などになるわけもないし、シエラはまだ十八歳。この若さで老眼とはなかなか切ないものがある。





いつもと違って歪む世界を前にシエラは試しに目を擦ってみた。



.....スーッ。

一筋、シエラの頬に何か冷たいものが流れた。
その冷たい何かは、シエラの頬から流れ落ち自分の膝に掛けてある布団の中へと染み込み、そして消えていく。



染み込んでいったところを軽く手で触れた。
それからその冷たい何かを手で拭ってみる。


.....何だ、これは。
それを見て思わず首を傾げてしまった。







 
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