社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
♡正真正銘の甘い唇

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 今年は梅雨がないらしい。そんな嘘を信じてしまうくらい六月は雨が少なかった。その影響なのか、七月に入った途端に日本列島を襲ったのは猛烈な暑さだ。

 夏の満員電車は最悪だ。

 冷房が掛かっていても冷気をちっとも感じないし、汗のにおいやら加齢臭やら、涼しい時期には鳴りを潜めていたにおいが勢いを増す。でも一番つらいのはやっぱり、おじさんたちに何十分も密着していなければならないことだ。

 汗でしっとり濡れた他人の腕が直に肌に触れるとぞっとする。といってもお互い様だろうけれど。

 途中の主要駅に着き、乗客は雪崩のように降りていく。隙間ができてほっとしたのもつかの間、今度はより多くの通勤客が乗り込んできた。人の波に押し流されながら、泳ぐようにして今日はドア横の安全圏を運よく確保することができた。

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