社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「……わかった」

 目をつぶり、彼は息をつく。伸ばしていた手を引っ込めて私の頭をふわりと撫でる。

「結愛がいいって言うまで、体には触らない」

 言いながら、ソファに沈んでいた体を起こしてくれた。

「体目当てじゃないって、証明してやる」

「本当ですか? じゃあ一年後とかでもいいですか?」

 社長から、んぐっと喉が詰まったような声が漏れた。

「……できれば一ヶ月、いや、半年……」

 もごもごと口にしてから、がくりと項垂れる。

「いいよ。いつまでだって待つ」

 拗ねたような目で私を見ると、彼は私の後頭部を引き寄せた。優しい手つきでメガネを外され、ぼやけた視界の中で端正な顔が近づいてくる。

「今は、これで我慢する」

 そうつぶやいて、社長は私に柔らかいキスを落とした。




< 352 / 383 >

この作品をシェア

pagetop