君が夢から覚めるまで
10.罪悪感
結局、その次のデートでも進展は無かった。

『はあ?まだ⁉︎なに純情ぶってんだよ‼︎』
高校の友人、類は電話越しに呆れた声を出す。
『今時小学生でも付き合ったその日にキスぐらいするぜ?破廉恥プレイボーイの名が廃るだろ』
「ひでぇ言われよう…俺、そんなんでもなかったよ」
確かに…女に不自由した事は無かった。
女の子といる時間は楽しかった。
だから、いつも誰かと付き合っていた。
ただそれだけだった。
『何で?キスぐらい朝飯前だろ?』
「本当、何でだろうな…自分でもビックリするよ。1秒でも早く自分のモノにしたくて堪らないけど、なんか本人を目の前にするとビビっちゃうんだよな…。俺、こんなの初めてってか、マジで惚れてる」
『うっわ〜怜からマジ惚れなんて聞くとは思わなかった』
電話の向こうで類が大笑いする。
怜もつられて笑った。
「今まではさ、俺の事好きって言ってくれる子ばっかだったじゃん。けど、今度は逆じゃん?香帆ちゃんはまだ俺の事、本気で好きになってないんだよ。なのにそんなにガッついていいのかな〜って」
『怜らしくねぇな〜。相手だって初心者じゃねぇんだろ?キスぐらいどってことねぇよ。それより、生徒なんかじゃなく男だってとこ見せてやった方が良いんじゃねぇの?その方が彼女もお前の事ちゃんと意識してくれんじゃね?』
「い、いいかな…やっちゃって…」
『いいだろ。むしろヤれよ。お前、キスごときでそんな事言ってたらこの先どうすんだよ。死ぬまでヤレねぇぞ』
「う〜それは嫌だ…」
『だろ?だったらキスでもなんでもサッサと済ませて押し倒す事だけ考えてろ』
「乱暴だな〜香帆ちゃんそうゆうの好きかな…」
『お前の今までの女遊び、無駄にすんなよ。相手は年上のお姉様なんだからな。下手したらお前より豊富かもしれねぇぞ?』
「香帆ちゃんはそんな女じゃない」
『はいはい、男はみんなそう言うんだよね、自分の女だけは違うってさ』
香帆はそんな男遊びをするような女じゃない。
昔の彼を未だに忘れられないぐらい一筋なのだ…。
そう、今でも…だから余計不安になる。
香帆といても甘い雰囲気には全然ならない。
まるで香帆自身がそうならないように避けているかのようにも感じる。
それが、怜の自信を無くすのだ。
けど…この先もずっと香帆と一緒にいたいと思えば思うほどプラトニックは辛い。
今度…今度こそ決めよう…。
そう強く決心した。
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