年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
私はここまでされてもまだ事実を受け入れ難く、ちらっと相手の顔を見ると、その鋭い眼差しに負けてしまい、止むなく足を中に踏み入れた。


お尻を着けると彼はドアを閉め、自分が運転席に座るとエンジンを掛けて走り出した。


車窓の外では、オフィスから出てきたと思われる社員達が、呆然と私の乗った車を見つめている。
その中には今井さんの姿もあり、思わずガバッと身を起こして、窓の縁に手を掛けそうになった。けれど……


(マズい。私が乗ってるとバレない方がいいんじゃ…)


咄嗟にそう判断して、シートに背中をくっ付け直す。
誰にも気付かれないよう顔を下に向けてしまい、ただ静かに走り抜ける車のエンジン音だけを聞いていた___。


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