駅前にあるホテルには五分もあれば着いてしまった。

私はその間スマホにも触れず、運転している神田川さんの後頭部をじっと見つめ、息を殺しているだけに留まった。


「どうぞ。降りて下さい」


ホテルの正面玄関に車を止めると、神田川さんはさっと運転席から降りてドアを開けてくれる。

スッと差し出される手に戸惑う。けれど、エスコートされながら車を降り、目の前に聳え立つ三十階建てのホテルの中を見つめた。


「こちらでございます」


先導する神田川さんは、早くしろと言いたげな雰囲気で歩き始め、私はオドオドしながらも中に入り、ホテルのラウンジへと到着した。



「お待たせ致しました。社長」


深く頭を項垂れる神田川さんの向こうから、ああ…という低い男性の声が聞こえる。

それにビクッとして、これが輝のお父さんの声?と怖気付きそうになりながらも、前へどうぞ…と促されて足を二歩進ませた。

下を向いたまま一礼すると、声の主が「お呼び立てして申し訳ない」と謝ってきた。


「どうぞ、掛けて下さい」


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