長期休暇明けの初日、韓国に向かう飛行機の中で俺は年末に謀られた罠を思い出していた___。



「初めまして」


割烹料亭の席に現れた女性は、金糸や銀糸で刺繍が施された真っ赤な振袖を着て、すました顔つきで俺の向かい側に正座した。


(チンドン屋?)


見た瞬間、そんな風に思った。
確かこんな派手な着物を着て街中を練り歩くんだったよな…と思い出しながら返事もしないでいると、隣に座っている母からトントンと肘を突かれ、仕様がなく「どうも」と適当な挨拶を返した。


「すみません。こんな愛想のない奴で」


俺よりも上座に座っている男が徳利を持ち、「まあまあご一献」と場を和ませようとする。

向かい側に座っている女性と両親は、何かを期待する眼差しでこっちを見つめ、俺はそんな視線に反吐が出そうになりながら、とっとと席を離れてトイレにでも逃げ出してやろうと考えた。


「輝、こちらは取引先の土井物産の社長さん夫婦と一人娘の麗奈(れな)さんだ」


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