秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
16.初めての夜


まさか直樹の家に泊まることになろうとは……。

 最上階のフロアに到着し、直樹が玄関の扉を開錠する様子を見ながら、来てしまって本当によかったのかなと今更不安になっていた。

 地下駐車場からの直通エレベーターを使用したので、他の入居者さんに見つかることはなかったが、これは完全に就業規則違反だ。もし見つかれば解雇されるようなことをしてしまっている。

 しかし直樹は樹里の父親で、家族同然の人。だから一緒にいることが自然なわけで――。

 頭の中で言い訳を浮かべては消して、消しては浮かべる。

直樹の背中を見つめながら、彼のプライベートな空間に入れることに緊張している。

 もし女性の影を見つけてしまったらと思うと不安になる。だけど彼の側にいたいという気持ちもあって、こうして招いてもらえていることが嬉しい。

 扉が開くと、樹里は容赦なく部屋の中に入っていく。やましいものが一切ないのか、直樹は気にすることなく、その様子を見て笑っている。
 
< 141 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop