――忘れられない女性がいる。

 それは俺にとって苦い思い出。思い出したくないのに、ふとした瞬間に蘇ってくるから厄介だ。

 小野寺直樹、二十五歳。

 上場企業を複数束ねる小野寺グループの創設者の玄孫で、現在祖父が会長、父が社長を務めている。俺はその後を継ぐべく、傘下の会社で仕事を学んでいる。

 といっても、その会社の役員になっており、現在の社長の仕事を勉強しているところだ。その社長は俺の父の古くからの友人で、社長の息子だということを取っ払って色々と容赦なく指摘してくれるから、とても助かっている。

 その会社は主にアパレル系の流通会社となっているので、今回海外の工場の見学に何日間か出張をしていた。向こうを夜に出発して、到着したのが今朝。

 まだ早朝の空港で到着コンコースの横にある大きなガラス窓から昇っていく太陽を見つめていた。

 フライト中に見た夢に昔の恋人が出てきた。
 高校生のころ、初めて好きになった子は、別のクラスの物静かな女子だった。
 うちの学校は富裕層の子どもばかりで、いわゆるお坊ちゃん学校だった。
親が何の職業しているかで、子どものランク分けがされる。

 そういうのが、すごくくだらなくて、全く意味のないものだと言っても、すでにできあがっているシステムを崩すのは難しかった。