マリッジリング〜絶対に、渡さない〜
不審な車
 

“これだけはハッキリしておきたいのは、亜紀が心配するようなことは断じてないから”

大地が家を出てから数分。

ピロンと鳴った通知音でスマホを手にすると、そんなメッセージが画面に映し出されていた。

子供たちの手前、私たちはいつものように笑顔で過ごし、お弁当も普段通り持たせて玄関まで見送ったけれど。

根本的には何も解決していないからこそ、すぐにこんなメッセージが送られてきたんだと思う。


『…断じて、か』

画面を見つめそうつぶやくと、私はすぐに指先を動かしていく。


“じゃあ、聞きたいんだけど。リップが上着に付いた経緯は?どうなればそんなことになるの”


そう返信すると、すぐに既読がついてまたメッセージが送られてきた。


“呼ばれて振り返ったらついたっていうか…。その状況は、直接説明するから。今日帰ったらちゃんと話そう”


直接、状況説明か…。
あまり聞きたくはないけれど、避けていても問題は何も解決しない。


“わかった。今日はなるべく早く帰ってきてね”

だから私はそう返信して、大地の帰宅を待つことにした。

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