わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜

一花は真っ直ぐに資料室に向かった。そこに、その人はいるはずだった。

「失礼します」

資料室には室長の男性はおらず、派手な顔をした明るい茶髪の女性がデスクにひとり座っていた。

「美園さん」

一花は彼女に声をかけた。美園が面白くなさそうな顔を向ける。返事はなかった。

「仕事中にごめんなさい。実は……」

一花は榛瑠の現状を話した。会社では自分の立場を隠して苗字も変えていた一花だったが、多分、美園は知っているので隠し立てはしなかった。というより、そんな事を慮る余裕はない。

美園は聞き終わるや否や立ち上がって言った。

「なんていうとこ?」

「え?」

「病院、名前。さっさと教えなさいよ。知らないの?それとも知らせない気?っていうか、あんた何であたしのとこ来たの?」

「えっと」

「まあ、あんたの思惑なんてどうでも良いけど」

「えっと、場所は早川さんが知っていると思う」

「あ、そう。じゃあ……」

その時、室長が部屋に入ってきた。美園が一花を相手にするのをやめて彼に話しかける。

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