わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜

2.

「どうしてこうなるの?」

「私が聞きたいです。なんでそうなるんですか?生クリームを袋に入れて絞るだけですよ?」

榛瑠は冷たい目で一花を見下ろしていた。一花も自分のクリームでベタベタになった手を見つめる。

結局一緒に眠ってしまって榛瑠に起こされた時、もう、冬の空は暗くなっていて、夕食は彼が近くのカフェに買い出しに行った。出張に備えて食材もないし、外食に出て行くのも億劫ということで。

その時、デザートにプリンを買ってきて、生クリームあるし飾り付けしたいな、ということになったのだった。

「だって、絞りだし袋にうまく入らないんだもの、それに、うまく絞れないし」

一花は皿の上の無残に盛られたクリームを見た。

「わたし、大人になったら器用になるもんだと思ってたのに」

「そうですか、私は全く思っていませんでしたけどね。賞賛できるほどの不器用さですから」

「……ひどい」

言いながら一花は手についた生クリームを舐めようと口元に持っていく。

「ほら、髪につきます」

「え? え?」

「今度は顔についた。いいから動かないで」

一花が手を持ち上げた状態で固まっていると、榛瑠が彼女の顔にかかっている髪を耳にかける。

「本当に、こういうところ小さい時のままですね」

「ごめんなさい」

一花は視線を下に向けながら謝った。さすがに、子供っぽくて恥ずかしい。
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