世界で一番可哀想な男のお話
序章

出来の良い子

遠い、遠いところに、
このお話の主人公となる男の子が産まれた。
普通の赤ちゃんなら産まれてきてすぐ泣くが、
彼は一切泣かなかった。
かと言って息をしていない。というわけでも無かった。
しっかり息をしているが泣きはしなかった。
彼が産まれたのは、
その土地を治める王とその愛人との間である。
彼はニルと名付けられた。
決して褒めるべき関係性の上に産まれた子ではないが、
彼は王やその付近の大人からもとても可愛がられた。
というのも、彼は王の子の中でも特別出来が良かったのだ。
が、少し変わっている子だったので、
気味悪がっている大人は彼を可愛がる大人以上もいた。
彼はあまりに全てにおいて無頓着で、
言われるがままにロボットのように動く子だった。
そのせいか彼には同年代の友達は一人もいなかった。
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