不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
彼がキスをしない理由
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十分後。足を折り畳んで座り込んでいたら、背後のドアがゆっくりと開いた。
久遠くんだった。

うつ向いたまま、私と視線を合わそうとしない。私は立ち上がり、とりあえず玄関に入れてもらった。

「……ごめんね。久遠くん」

この謝罪が何の謝罪なのか、彼は分からなかっただろう。私にも分からなかった。傷付けたことへの謝罪で、まだ何かの行動を省みるものではなかった。

「……何も見てない」

え?見てないフリ?
予想外の反応に、私は回り込んで彼を見た。ひどい顔だ。私を押し退けて、彼はタオルを取りに行き、私の頭に被せた。

「あのね、一緒にいたのは伏見さんっていう人。イベントでたまたま会ったの。……久遠くん、会ったことあるよね?覚えてる?」

「……覚えてねぇ」

それも嘘。覚えてるくせに。雨の中で伏見さんを見たとき、最初のパーティーと同じ敵意の目をしていた。
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