赤みを帯びた頰のまま教室に入る。

デパートのトイレで確認した時よりも腫れがひどくなっている気がするけれど、今日は菱川先生の講座もあるし休みたくなかった。

結局、プレゼントは買えなかったけれど…。


「大野!どうしたんだよ!」


真っ先に崎島が駆け付けてくれて、頰を凝視された。


「階段から転んだ…」


分かりやすい嘘だけれど、他に言い訳は思いつかない。


「はあ?すごい腫れてるぞ。病院行った方がいい」


「大丈夫。見た目ほど、痛くないから」


心配してくれる崎島に大丈夫だと笑ってみせると、激痛が走った。

それでもどうにかやり過ごして、いつもの席に着く。

私の頰は目立つようで、クラス中の視線を集めていた。


どんな気持ちで有明さんが手を上げたか、その気持ちが分かるからーー本当の理由は絶対に言わない。それが彼女への最大の誠意だよね。





「教科書59ページを開いて」


誰も聞いていない授業を展開する菱川先生は、淡々と板書を始める。


先生が教室に入ってくるなり、すぐに教科書を開いて俯いたため目は合っていない。
出来れば家まで気付かれずにいたいな。


「大野、痛む?」


下を向いたままの私を気に掛けてくれた崎島の声に首を振る。


「本当に大丈夫かよ?」


「崎島、私語は慎んで頂こうか」


後ろから身を乗り出して私の頰を確認する崎島をすかさず菱川先生は注意した。


「すみませーん」


ふざけた返答の崎島を一瞥した先生と、目が合う。


しまった…。


僅かに菱川先生の眉が潜められた。


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