雪也と來夢は高校の同級生だった。

 雪也は高校1年の秋に來夢のクラスに転入してきた。

 そして今度は來夢が高校2年のときに父の転勤について転校することになった。

 雪也とは1年2年と同じクラスだったが一緒にいた時間は1年ほどで、話したこともあまりなかった。

 活発な來夢がいる女子のグループは同じような男子グループと仲良くしていた。

 雪也は目立たない存在でいつも1人でいることが多かった。

 それを近寄りがたいという女子もいたが來夢には雪也は他の男子とは違う何かを秘めているように見えた。

 來夢は雪也を初めて見た時のことをよく覚えている。

 スラリとした体の上に乗った端正な顔は日焼けとは無縁で、田舎の他の男子高校生とは明らかに違って見えた。

 そして何より來夢を驚かせたのは雪也がそっくりだったことだ。

 そっくりだった、來夢の母が大切に持っている写真の男に。

 來夢の母はときどき家からいなくなった。

 家出という意味ではなく台所や居間、物干し竿が吊るされた庭先などいつも母が忙しく立ち働く場所に姿が見えないとき、母は決まって家のひっそりとした場所で1枚の写真を眺めていた。

 ずっと前に母は1度だけ來夢に教えてくれた。

『お母さんの初恋の人なのよ』

1度写真を眺めている母を影から見ている父を見たことがある。

 來夢に気づいた父は來夢を連れてそっとその場を離れた。

 写真を見つめる母もそんな母を見守る父も2人とも哀しそうだった。

 來夢が中学2年のとき母は他界した。

 癌だった。

 母の葬儀には來夢の知らない人たちがたくさん来た。

 写真の男は現れなかった。

 それから母から見られなくなった写真を來夢が代わりに見るようになった。

 母は写真を物置部屋の一番奥の古いタンスの引き出しの中に閉まっていた。

  日に焼けて筋肉質な父とは正反対の細面の男の目は來夢に優しく微笑みかけた。