上司との同居は婚約破棄から
1.捨てる神あれば

「ごめん。
 謝って済む話じゃないんだけど。
 だから、藤花とは結婚できない。」

 脳裏に幾度となく繰り返し流れる再放送。
 それは彼の悲痛な表情と謝りの台詞。

 ふざけないで!!
 って泣いて縋りたかった。

 ボロボロの今の私を彼に見せてやりたい。

 仕事の帰り道、数日前までは逸る気持ちで足早に帰っていた頃が夢のようだ。
 足取りは重くどこへ向ければいいのか分からない。

 歩道橋の欄干から下を覗き見る。
 頬を撫でる風が冷たい。
 下から吹き上げる風が髪の毛を弄んだ。

 忙しなく流れる光の瞬きを眺めて引き込まれそうな心持ちになっていく。

 綺麗……だなぁ。
 あの光がつかめたら私の幸せももしかして……。

 吸い込まれるような幻想的な光の瞬きに手を伸ばす。

 あぁ。本当につかめるかもしれない。

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