キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
3-2
震動もなく座り心地がいい皮張りの後部シートに、淳人さんと隣り合って座り。走り出した車の中で、あたしは首を傾げて見せた。

「淳人さん、もしかして同じ電車に乗ってました?」

彼が会社を出たのとあたしが退社した時間は、そんなに大きく変わらない。
車で移動したんだったら、距離的に間違いなく到着時間に間に合ってないはず。だとしたら。

「会社のそばで待ち伏せる訳にも行かないだろう。リツが、もう一人と出てきた後をつけてきただけだ」
 
なんだかストーカーみたいな発言を、事も無げに言われてる。

「電車とか普通に乗るんですね」

極道さんて、偉い人は狙われるから絶対に用心棒付きの車しか乗らないのかと思ってた。
そう付け加えて意外そうに感心したら、返された苦笑い。

「今はどこも監視カメラがあるからな。そんな目立つ場所で派手にやらかす馬鹿もいない」

かえって安全なぐらいだ、と淳人さんは不敵そうに口角を上げた。

「俺の本業は、菅谷から聴いたのか」

「はい、まあ。・・・お兄ちゃんは淳人さんのこと、話してくれてなかったから」

「大っぴらに言えることでもないしな」

大して気にしていない様子で、さらりと言う。
そこで、あっと思い出し、あらたまって淳人さんにお礼を口にした。

「そうだ、お兄ちゃんのお墓参りに来てくれてありがとうございました」

ちょこんと頭を下げる。
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