キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
4-3
2月14日。朝、ミチルさんに一番乗りでプレゼントを渡す。一緒に住んでる特権は、もれなく行使しないと!
毎年、会社からもらって帰るチョコの数は15個は下らない。みなさん、美味しくいただいてます、ごちそうさま。

「いつもありがとう、りっちゃん」

今日は、去年プレゼントした桜色のネクタイを紺のスーツに合わせてくれてた気遣いのイケメンさんが、目を細めて優しく微笑み、あたしの頭を撫でハグ付きでお礼を返してくれた。
近頃のミチルさんは『頭ぽんぽん』とそれが、標準セットになりつつあるよーな。

気分ほくほくで、駅に向かって自転車こぐ足まで軽い。すごいお手頃な単純さ。自分でもつい笑えた。




会社では吉井さんと一緒に、店長に代表で義理、いや義務チョコを渡し、大して愛想もなく受け取られた。せめて笑顔で言おうよオトナなんだから。

二人だけになったお昼休憩で、吉井さんにも感謝チョコを渡す。
はにかんだような笑顔が返ってほっとした。

「あの、羽鳥さんにもあるんですけど、吉井さんから渡してもらっていいですか? 単なるご飯のお礼っていうか」

彼女と彼の微妙なカンケイを詮索する気はないけど、無視するのもどうかと思って。いちばん角が立たなさそうな方法を考えてみた。
彼女は少し考えるような仕草で、何かに思い至ったように快く引き受けてくれる。

「会社だとなかなか手渡せる機会が無いものね。志室さんの気持ちは、ちゃんと伝えておくから」

ふわりと薫る柔らかな笑みに、心が籠ってるのが分かって。羽鳥さんが惹かれるのも無理ないのかも。・・・横恋慕は切なそうだけど。

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