12月の春、白い桜が降る。
今日のデートはきっと、今までで一番素敵だった。

ようは私が病気と知る前と同じように接してくれた。

そして帰り際に生まれて初めてのキスをした。

病院の前で、少し不謹慎だったかもしれない。

それに、ちっともロマンチックでもない。

桜のような雪がはらはらと落ちて、静かな街で、静かなキスだった。

こんなに頭に、目に、鮮明に焼き付いた記憶が消えるなんて信じられない。

それに、忘れるわけがない。私がようのことを…。
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