やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
始まりの朝
やわらかな日差しが、カーテンの隙間から部屋の中央にまで差してきている。
室内はいつのまにか明るくなっていた。
もう朝?
ゆっくりと目を開ける。

身体がだるい。
じんわりと昨夜の感覚がよみがえってくると、自然に体が熱くなった。
昨日の感覚は、決して幻なんかじゃない。
だって、ほら。
現に今だって体の下に人の温もりを感じるもの。肌の感覚だけじゃない。
男らしい息づかいまで聞こえる。
これは現実だ。夢なんかじゃない。

憧れの人に抱かれて目を覚ます。
同じ夢を何度も見たけど。
今日ほど生々しく、記憶に残っていることなんてなかった。
昨日の夜、彼がどんなに情熱的だったか。
思い出すだけで、温かいもので心が満たされる。
眠りに落ちる前、
『お休み』とキスをして、このしっかりとした腕に包まれて眠りについた。
なんという幸せ。

「起きたのか?」

ん?
なぜか、素っ気ない言い方。
照れてるのかな。
でも、しっかりとした落ち着いた声は、耳に残ってる。
岡先輩にしては、あっさりした態度。

先輩、朝は苦手だろうか?
男の人だし。
寝起きだから、こんなもんだろう。
私の大好きな、岡先輩はもっと高い声のはずだけど。
寝ているうちに、先輩風邪でも引いたのかな。
< 1 / 159 >

この作品をシェア

pagetop