旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「心配するな。お前のアパートは別荘としてそのまま残しといてやるしもちろん家賃も出してやる。必要なものがあれば買ってやるし寝室は勿論別だ」

「なんだ、それは安心……って、そうじゃなくて!結婚っていうのはですね、愛があってこそするもので……!」



確かにそれはそれでありがたいけど、そもそも恋人ですらない相手と結婚なんてありえないでしょ!

そう再び反論をしようとした、その時。津ヶ谷さんは突然顔を近づけた。

かと思えばその瞬間、唇で私の唇を塞ぐ。



しっかりと触れた彼の薄い唇。

一瞬、時間が止まったかのように身動きできなくなる私に、津ヶ谷さんは唇を離すと笑みを見せた。



「愛なんて、そのうち芽生えるだろ」



そのうちって、いや、それよりも待って。

い、今……なにを?

キス、した?

津ヶ谷さんが、私に、キスをして……!?



徐々に実感がこみ上げ、またたくまに耳まで真っ赤にする。

そんな私の反応を見ながらも、津ヶ谷さんはなんてことないように顔の距離を離して、靴を脱ぎ家にあがる。



「あ、ひとつ言っておくけど」

「はい?」

「この偽装結婚がバレた時点で俺とお前との取引はなし。つまり、お前の秘密はバラすから」



は、はぁ!?



「せいぜいお互いのために、仲良い夫婦でやっていこうな」



にっこりとしたその笑顔は、爽やかで優しいもの。

けれどその奥には黒いものが見え隠れする。





マズい男に秘密を知られ、さらに結婚までさせられ、人生を握られてしまった。

あぁ、どうしてこうなってしまったんだろう。

なんて、後悔してももう遅いのかもしれない。



自分がおかれた状況になにひとつついていけず、私はただ唖然とするしかできなかった。





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