打って、守って、恋して。
私と彼をつなぐもの


それから私と藤澤さんは、何度か食事やらお酒を飲みに行ったりした。

村尾と魔王、どちらも飲んでみたけれど、お互いに森伊蔵の時と似たような感想しか述べられず。最終的に「もしかしたら私たちの舌は高級な味は分からないのではないか」という結論に至った。
他にも、行ったことのないちょっといいお肉を扱っているすき焼き屋さんにも行って、とろけるような柔らかい牛肉を堪能した。

ここ数年の中で一番充実していた数週間だったようにも思える。


「ふーん。そりゃあよかったわね」

「……なんでそんなにトゲがあるの」

包み隠さず言えと言うから話したのに、隣に座る凛子は不満しか見つけられないような顔で私を横目でじろりと睨んでいた。
チクチクとしたトゲのような雰囲気をまとった彼女に気を遣いつつ、サラダランチのレタスをフォークでつつく。

ケッ!と漫画のような悪態をついた凛子が、私と同じサラダランチのローストチキンにかぶりついてもぐもぐと口いっぱいに食べる。

「いや、決して藤澤は非モテタイプってわけじゃないのよ。ただとにかくファンの間では彼の塩対応が壁になって近づけなかったの。それをどうやって破ったわけ?」

それは、私も聞きたいです。

「来週は日本選手権の地方大会もあることだし、恋愛にうつつを抜かしてる場合じゃないでしょーよ、藤澤職人さん」

「でも、凛子の見立てでは絶対に十一月の全国大会に行けるって言ってたじゃない」

「それは間違いないわよ。やまぎんは道内ではほぼ敵なしだから」

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